作:そら音さま
夏目×三越の小説を書いていただきましたvほのぼのした2人のやりとりがかわいいです!
ありがとうございます〜!!
冬馬、か。トーマ。なんかそんな名前の外人がいたよなあ――いや違うな、あれはトーマスだ……って、人じゃないし。機関車だよね確か。顔があってさ、喋るんだよなアレ。
そんな風に連想してしまい、夏目は思わずぷっと小さく吹き出した。
「……なんですか?」
向かいのデスクで報告書を仕上げている三越が不審げにこちらを見る。
「や、なんでもないよ冬馬くん?気にしないで。仕事して」
夏目は慌てて誤魔化した。
デスクの上にドカっと両脚を上げて椅子の背にもたれ、思い切り欠伸をすると、三越が少しムッとした表情になって立ち上がった。彼はデスク越しに伸び上がるようにして腕を差し出し、夏目の革靴の踵を掴んで引っ張った。
「机に土足載せないでくださいって、この前も言ったじゃありませんか!何踏ん付けてるかわからないんだから!」
「ごめんなさーい……」
夏目は首を縮めて謝りながら、自分の靴を脱がせている三越を眺めた――彼にしたら夏目は、上司とはいえかなり非常識で、その上得体の知れない相手だろう。三越は几帳面なタイプだし、自分の下では色々と戸惑うことも多いに違いない。しかし今の所は音を上げる事も無く、ハードな現場仕事に懸命に付いて来ている。そうして夏目が解決した事件の辻褄合わせ――かなり困難と思われるが――これもどうにかこなしてくれている。
「あっ!」
靴を脱がせた三越が嫌そうに叫んだ。
「ちょっと、夏目さん!靴下裏返しじゃないですか!」
「え〜?そう?」
どうでも良さげに夏目が返事すると、三越はため息をついて今度は靴下を脱がせにかかった――どうやら直してくれる気らしい。彼は夏目の足から引き抜いた靴下を表に返していたが、ふとその手を止めて呟いた。
「――夏目さん……あのう……つかぬ事をお伺いしますが」
「はい?」
「この靴下……昨日も履いてらっしゃらなかったでしょうか……?確か……その前の日も……」
「履いてたよ?それが?」
「……□▲※ッ!?」
三越は喉の奥で、声にならない妙な悲鳴を発して手にしていた夏目の靴下を放り捨てた。
「あ!おいこら!なんだよ人の靴下、汚物みたいに扱って!」
文句を言いながら夏目は内心舌を巻いた。こいつ、一体いつ俺の靴下なんか見てやがったんだろ?三越の観察眼が鋭いのは知っていたし、そこを買ってもいたが、こんな事にまで発揮しなくても……女房か、っての。
そうだ。思いついて夏目は口にした。
「オイ冬馬。まさかお前、一課の流儀、聞いてないのか?」
「え?流儀、とは?」
三越が困惑した顔をする。
「しょうがねえなあ……課長が説明しなかったか?あのなあ、事件が起きた時にはな、それが解決するまで現場の刑事はパンツと靴下変えちゃいけねーんだよ」
「ええっ!?あの、それは……縁起担ぎ……のようなものでしょうか?」
「まあそんなとこだ。だが縁起担ぎよりもずーっと重い意味があんだぞ。なにしろ戦国時代からデカの間に伝わってる歴史的風習なんだから。犯人が捕まるまではガイシャだって浮かばれないだろ?それを差し置いて俺ら公僕が、清潔な下着や靴下で快適にすごしちゃ申し訳ないじゃないか」 「そ……それは……確かに……仰る通り、ですね……し、しかしパンツも変えちゃ駄目とは……ううぅ……」
やや青褪めて唸っている三越を見て、夏目はとうとう我慢できずに吹き出した。大笑いしている夏目を見て三越はぽかんとした顔をしたが、すぐ気付いたらしく目を吊り上げ、夏目の隣にとんで来て文句を言った。
「なっ……夏目さんっ!からかいましたね俺の事!?」
「はっはっは!ばれた?」
「ばれますよ!大体、戦国時代に刑事はいないでしょ!?誰がそんなでっちあげで騙されますか!」
「信じたくせにー。ああ面白かった!」
夏目は顔を赤くして怒っている三越の首根っこを捕まえて引寄せると、綺麗に整えられていた彼の柔らかい頭髪を、掌でかきまぜてくしゃくしゃにしてやった。
そんな風に連想してしまい、夏目は思わずぷっと小さく吹き出した。
「……なんですか?」
向かいのデスクで報告書を仕上げている三越が不審げにこちらを見る。
「や、なんでもないよ冬馬くん?気にしないで。仕事して」
夏目は慌てて誤魔化した。
デスクの上にドカっと両脚を上げて椅子の背にもたれ、思い切り欠伸をすると、三越が少しムッとした表情になって立ち上がった。彼はデスク越しに伸び上がるようにして腕を差し出し、夏目の革靴の踵を掴んで引っ張った。
「机に土足載せないでくださいって、この前も言ったじゃありませんか!何踏ん付けてるかわからないんだから!」
「ごめんなさーい……」
夏目は首を縮めて謝りながら、自分の靴を脱がせている三越を眺めた――彼にしたら夏目は、上司とはいえかなり非常識で、その上得体の知れない相手だろう。三越は几帳面なタイプだし、自分の下では色々と戸惑うことも多いに違いない。しかし今の所は音を上げる事も無く、ハードな現場仕事に懸命に付いて来ている。そうして夏目が解決した事件の辻褄合わせ――かなり困難と思われるが――これもどうにかこなしてくれている。
「あっ!」
靴を脱がせた三越が嫌そうに叫んだ。
「ちょっと、夏目さん!靴下裏返しじゃないですか!」
「え〜?そう?」
どうでも良さげに夏目が返事すると、三越はため息をついて今度は靴下を脱がせにかかった――どうやら直してくれる気らしい。彼は夏目の足から引き抜いた靴下を表に返していたが、ふとその手を止めて呟いた。
「――夏目さん……あのう……つかぬ事をお伺いしますが」
「はい?」
「この靴下……昨日も履いてらっしゃらなかったでしょうか……?確か……その前の日も……」
「履いてたよ?それが?」
「……□▲※ッ!?」
三越は喉の奥で、声にならない妙な悲鳴を発して手にしていた夏目の靴下を放り捨てた。
「あ!おいこら!なんだよ人の靴下、汚物みたいに扱って!」
文句を言いながら夏目は内心舌を巻いた。こいつ、一体いつ俺の靴下なんか見てやがったんだろ?三越の観察眼が鋭いのは知っていたし、そこを買ってもいたが、こんな事にまで発揮しなくても……女房か、っての。
そうだ。思いついて夏目は口にした。
「オイ冬馬。まさかお前、一課の流儀、聞いてないのか?」
「え?流儀、とは?」
三越が困惑した顔をする。
「しょうがねえなあ……課長が説明しなかったか?あのなあ、事件が起きた時にはな、それが解決するまで現場の刑事はパンツと靴下変えちゃいけねーんだよ」
「ええっ!?あの、それは……縁起担ぎ……のようなものでしょうか?」
「まあそんなとこだ。だが縁起担ぎよりもずーっと重い意味があんだぞ。なにしろ戦国時代からデカの間に伝わってる歴史的風習なんだから。犯人が捕まるまではガイシャだって浮かばれないだろ?それを差し置いて俺ら公僕が、清潔な下着や靴下で快適にすごしちゃ申し訳ないじゃないか」 「そ……それは……確かに……仰る通り、ですね……し、しかしパンツも変えちゃ駄目とは……ううぅ……」
やや青褪めて唸っている三越を見て、夏目はとうとう我慢できずに吹き出した。大笑いしている夏目を見て三越はぽかんとした顔をしたが、すぐ気付いたらしく目を吊り上げ、夏目の隣にとんで来て文句を言った。
「なっ……夏目さんっ!からかいましたね俺の事!?」
「はっはっは!ばれた?」
「ばれますよ!大体、戦国時代に刑事はいないでしょ!?誰がそんなでっちあげで騙されますか!」
「信じたくせにー。ああ面白かった!」
夏目は顔を赤くして怒っている三越の首根っこを捕まえて引寄せると、綺麗に整えられていた彼の柔らかい頭髪を、掌でかきまぜてくしゃくしゃにしてやった。